「確認したのに」なぜ起きる?従業員の思い込みが招くアレルギー事故

「お客様に確認して、“大丈夫”って言ったのに、なぜ事故が起きたのか」──
そんな声は、アレルギー事故の現場でよく聞かれます。
実は多くのケースで、“知識不足”や“思い込み”が、事故の引き金になっているのです。

今回は、実際に起きた事例をもとに、「なぜ事故が起きたのか」「どう防ぐか」を分かりやすく整理します。

1. 「確認したのに」起きる事故のメカニズム

アレルギー事故の報告を見ると、
「確認した」「お客様に説明した」「材料を聞かれた」──
それでも事故が起きた、という事例が少なくありません。

その多くは、次のようなパターンです。

  • 店員が“自分の知っている範囲”で答えてしまう
  • 原材料を“見ずに”記憶や感覚で答えてしまう
  • 口頭での伝達が途中で止まり、厨房まで正確に届いていない

お客様は「確認したから大丈夫」と信じています。
その信頼を裏切る結果になれば、たとえ故意でなくても、店への信用は大きく揺らぎます。

2. 実際に起きた事例から

事例①:フライドポテトに小麦粉【原因:小麦】

お客様が「小麦は使っていますか?」と質問。
店員はフライドポテトの原材料を確認し、「じゃがいも、塩、油だけです」と答えたが、実際には揚げる前に衣代わりに小麦粉をまぶしていた。
結果、食事後すぐに咳き込み、じん麻疹が口周囲から全身に広がった。

👉 教訓: 調理工程を知らないスタッフが口頭で答えるのは危険。
厨房で使う食材や下処理を把握し、分からない場合は必ず厨房の担当者に確認することが大切。

事例②:グルテンフリーと誤って案内【原因:小麦】

子どもに小麦アレルギーがあるため、母親が「グルテンは入っていませんか?」と質問。
スタッフは「米粉100%なので大丈夫」と答えたが、実際には生地に小麦グルテンが含まれていた。
男児は店内でピザを食べ、じん麻疹、腹痛、呼吸困難などの症状がでた。
ピザ生地はメーカーから仕入れていたが、店側は原材料を確認していなかった。

👉 教訓: 原材料は必ず目で確認し、情報をスタッフ間で共有する仕組みを作ることで、誤情報による事故を防げる。

事例③:アイスに卵不使用と書いてあったが…【原因:卵】

焼肉屋でメニューに「卵不使用」と書いてあったアイスクリームを食べたところ、腹痛・嘔吐・呼吸困難などのアレルギー症状が発生し、病院搬送となった。実際には原材料に卵が含まれていた可能性がある。

👉 教訓: 表示は“信じる”ものではなく、“確認する”もの。
原材料や仕入れ先は定期的にチェック・更新し、製造元変更・仕入れ先変更のたびに、スタッフ全員に周知することが大切。

事例④:担当者不在による確認ミス【原因:乳製品】

子どもが卵・牛乳アレルギーのため、アレルギー食対応のレストランに、電話で卵と乳成分の除去が可能かを確認して出かけた。
デザートにゆずシャーベットが出たため、再度確認したところ「中の者に確認したので大丈夫です」と回答されたので安心して食べた。
しかし、ゆずシャーベットには乳成分が含まれており、食べた直後アレルギー症状が発生した。
レストランの従業員が厨房に確認した際、唯一のアレルギー調理担当者が不在で、アレルギーに詳しくないスタッフが大丈夫と判断したために起こった事故だった。

👉 教訓: アレルギー対応は“詳しくない人が判断する”ことが最大のリスク。必ず知識を持つ担当者が対応し、不在時には提供を一時保留するなど安全策を徹底すること。

3. 店には「安全配慮義務」がある

飲食店には、法的な「アレルギー表示義務」はありません。
しかし、お客様から確認があった場合には「安全配慮義務」が発生します。

つまり──

お客様が確認した上で提供した商品によって事故が起きた場合に、店側の安全配慮への注意義務が発生し、安全義務が果たされていないと判断されれば、損害賠償を請求される可能性があります。

表示義務がなくても、「誤情報を提供した責任」は残ります。
だからこそ、確認フローを“仕組み”として整えることが重要です。

4. 現場でできる“確認フロー”の作り方

確認を「人の感覚」ではなく、「仕組み」で担保すること。
これが、事故防止の第一歩です。

✅ 注文時

  • 「アレルギーはおありですか?」を聞くことをルール化
  • 言いづらいお客様向けに、メニューやPOPに記載する

✅ 厨房への連絡

  • アレルギー情報をメモまたはオーダー票に記載
  • 「アレルギーあり」は赤マークなどで目立たせる

✅ 原材料確認

  • 加工食品のラベルや製造情報をファイル保管
  • 発注変更時は、新旧比較チェックを行う

✅ 担当者対応

  • 「分からないときは必ず担当者に確認」
  • 担当者が不在のときは「提供を一時保留」にする

✅ 提供前チェック

  • 最終確認者(提供担当)のチェック
  • 不安が残る場合は、お客様に「リスクがある可能性」を正直に伝える

5. 教育が“事故ゼロ”への近道

アレルギー対応は「難しい」ものではありません。
ただ、「知らないこと」が最大のリスクになります。

スタッフが自信をもって対応できるようにするためには:

  • 月1回の「原材料確認ミーティング」
  • 新人研修での「アレルギー対応シミュレーション」
  • 確認フローのマニュアル共有(紙1枚でOK)

「確認する」ことが、誰にとっても当たり前の行動になれば、
多くの事故は防げます。

6. まとめ:「確認したのに」を、もう二度と聞かないために

“丁寧な確認”は、お客様を安心させるだけでなく、
お店の信頼を守る行為でもあります。

確認を「人」ではなく「仕組み」で支える。
その意識が、アレルギー事故を防ぐ一番の鍵です。

参考:アレルギー産業における事故事例